令和4年4月1日から施行される改正法(パワハラ防止法と成年年齢引下げ)
4月1日からパワハラ防止法により中小企業にもパワハラ防止措置が義務付けられます
かつて雇用対策法として存在した「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」というとても長い名前の法律(略称は「労働施策総合推進法」といいます)が,2019年5月に改正され,パワーハラスメント防止に関する規定が盛り込まれたことから,「パワハラ防止法」とも呼ばれるようになりました。
この「パワハラ防止法」は,令和元年5月にまず大企業からパワハラ防止措置を義務付け,それが令和4年4月1日から中小事業者にも適用されることになります。これによって,全ての事業者にパワハラ防止措置が義務付けられることになりました。厚生労働省が詳しい資料を発表しておりますのでご参照ください。事業主はパワハラ防止のために次のような措置を取ることが必要になります。
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
パワハラとは何かを明らかにした上で,事業主としてパワハラを許容しないことを明らかにしましょう。また,仮にパワハラが行われた場合には,事業主として厳正に対処する旨を就業規則やパワハラ防止規程において定め,労働者に周知しましょう。
② 相談(苦情を含む)に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備
パワハラ相談窓口をあらかじめ定め,労働者に周知しましょう。相談担当者が相談を受けた際にどのように行動すべきかも事前に決めておく必要があります。相談内容や状況に応じて適切に行動できるようにしておきましょう。
③ 職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
パワハラを確認したら,迅速かつ速やかに事実を確認し,適切な措置を取りましょう。被害者に対する配慮と加害者に対する措置が必要です。また,個別の事例を職場全体にフィードバックして,再発防止に向けた措置を講じましょう。
④ 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
相談者や加害者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ,その旨を労働者に周知しましょう。パワハラの相談をしたことで解雇など不利益的扱いをされない旨を定めておく必要もあります。
自らの事業所において十分なパワハラ防止措置がとれているかどうか不安な場合は弁護士にご相談ください。
4月1日から改正民法により成年年齢が18歳に引き下げられます
平成30年に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることを内容とした民法の一部を改正する法律が成立し,令和4年4月1日から施行されることになります。
民法において,成年になるということは,①単独で契約を締結することができるようになる,②親の親権に服することがなくなる,という意味を持ちます。この成年年齢は,明治29年に民法が制定されてからずっと20歳と定められてきました。
政府の説明(法務省のQ&A参照)によれば,成年年齢の引き下げを行う理由は,投票権年齢の引き下げが行われたこと,世界的に見ても成年年齢を18歳とするのが主流であること,若者の自己決定権を尊重して積極的な社会参加を促すことにあるそうです。
成年年齢の引下げによって,18歳及び19歳の方は,次のようなことができるようになります。もっとも,社会的な責任が増えるということを十分に理解し,保護者や関係者もリスクについて十分な周知を行うことが必要になるでしょう。
① 親の同意を得ずに様々な契約をすることができる
未成年者の契約については,保護者による取消しが可能です。そのため,これまでは20歳未満の方が契約する場合には保護者の同意書を条件とするなど,契約が事後的に取り消されないよう事業者が工夫をしていました。
成人年齢の引き下げにより,今後は18歳及び19歳の方が,保護者の同意なく携帯電話を購入したり,アパートの賃貸借契約を結んだり,クレジットカードを作成したり,ローンを組んで高額品を購入するなどといったことできるようになります。
この点について,18歳及び19歳をピンポイントで狙う業者が必ずいるはずです。消費者被害のリスクが極めて大きいことから,様々なメディアにおいて警告されていますが,実際に相当なトラブルが発生することが予想されます。契約をする際には十分に注意し,少しでも不安がある場合には専門家や関係機関に相談しましょう。消費者相談センターには様々な相談事例が公開されているため参考になると思います。
② 親権に服することなく行動することができる
親権者は,民法において,未成年者の住む場所を決めたり,仕事に関する許可を与えたり,財産を管理したりする権利が与えられています。これを「親権」と呼びます。
成年年齢の引き下げにより,18歳及び19歳の方は,親に服することなく自分の住む場所を自分で決めたり,進学や就職などの進路決定を自分の意思ですることができるようになります。決めることができるようになります(もっとも,法律上の権利と,実際の親との関係性については全く別問題ですので,個々の家庭で決めたやり方が尊重されることになります)。
また,10年有効のパスポートを取得することや,公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと,性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても18歳でできるようになります。