遺言書のつくりかた
遺言書とは何か?
生前に誰でも自由に自分の財産を処分できるように、自分の死後の財産の行方も本人が自由に決めることができます。そして、自分の死後の財産の行方を決める法律行為のことを「遺言」といいます。
遺言は、原則として、誰でも自由にできますが、本人の死後に財産の移転という重大な効果をもたらすものであるため、その方式は法律によって厳格に定められています。そして、法律に定められた方式以外の遺言は、原則として無効となります(民法960条)。
法律に定められた方式に従って作成された遺言は、一般的に文書の形になっていることから、その文書のことを一般的に「遺言書」と呼んでいます。
民法960条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
遺言の種類には何がある?
遺言には、方式ごとに複数の種類があります。まず、大きく分けると、「普通の方式」による遺言と「特別の方式」による遺言の二つに分かれます。一般の方が遺言書を作成しようと考えた場合、まず普通の方式による遺言を検討すれば足りるはずです。特別の方式による遺言は、極めて特殊な場合以外に作成することはできませんので、例外的なものだと考えてください。
普通の方式
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
普通の方式による遺言書は、次のとおり3つの方式があります。まず、「自筆証書遺言」は、自分で作成する遺言です。原則として、すべて自筆で作成する必要がありますが、最も手軽で一般的な方式です。
「公正証書遺言」は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。公証人という法律の専門家(多くは退官した元裁判官や元検察官が務めています。)が作成するため、方式違背のために無効となるリスクがない方式です。
「秘密証書遺言」は、遺言者が作成した遺言を封じ、それを公証役場に持って行き所定の手続を行うものです。内容を他者に知らせることなく、かつ公証人に手続きを扱ってもらえるというメリットがあります。
特別の方式
- 死亡の危急の迫った者の遺言
- 伝染病隔離者の遺言
- 在船者の遺言
- 船舶遭難者の遺言
特別の方式による遺言には、次のとおり4つの方式があります。まず、「死亡の危急の迫った者の遺言」は、一般的に危急時遺言などとも呼ばれるもので、病気などで死亡の危急の迫った遺言者が緊急的に作成するものです。証人3人以上の立会のもと、口授による方法で作成し、20日以内に裁判所の確認が必要です。
「伝染病隔離者の遺言」は、伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にある者が作成するもので、警察官1名とその他1名を証人として立ち会う必要があります。
「在船者の遺言」は、船舶中にある者が、船長又は事務員1名及び証人2名以上の立会によって作成するものです。
「船舶遭難者の遺言」は、船舶が遭難した場合に、その船中にあって死亡の危急の迫った者が、証人2名以上の立会もので口授の方法で作成するものです。
遺言書をつくってみよう
自筆証書遺言を作成するのは、そんなに難しいことではありません。遺言の内容さえ決まっていれば、法律(民法968条)で決められた次のような約束事を守り、誰でも自由に作成することができます。
① 全文自筆で作成すること
自筆証書遺言は、原則として、全文を遺言者本人の自筆で作成する必要があります(民法968条1項)。パソコンを使用したり、他者に代筆をしてもらったりすることはできません。何らかの事情により、遺言者本人の自筆での作成が困難な場合には、公正証書遺言を作成するようにしましょう。
遺言書を作成する用紙に決まりはありません。メモ用紙でも、コピー用紙でも、ノートでも構いません。極端な話、スーパーのチラシの裏でも遺言としては有効です。
なお、法改正により、自筆証書と一体のものとっして添付された相続財産目録については、必ずしも自書する必要がなくなりました(民法968条2項前段)。ただし、自筆ではない記載があるすべての頁に署名押印が必要です。忘れないようにしましょう。
② 日付・氏名を記入すること
自筆証書遺言には、作成した日付と遺言者の氏名を記入する必要があります(民法968条1項)。もちろん、日付も氏名も、遺言者本人の自筆です。日付は、西暦でも和暦でも構いませんが、年月日まで漏らさず記入しましょう。遺言書は何通作成してもよく、複数の遺言書がある場合には新しい遺言書のみ効力を有するため、遺言書に記入された日付が必要に重要な意味を持ちます。
③ 押印すること
自筆証書遺言には、遺言者本人の押印が必要になります(民法968条1項)。どのような印章でも構いませんが(例えば、100円で購入した認印でも構いません。)、遺言者本人のもので、かつ遺言者本人が押印してください。押印場所の指定はありませんが、氏名の横に押印するのが一般的です。なお、裁判例には、拇印による遺言を有効とした例(最判平成元年2月16日民集43巻2号45頁)、封筒の封じ目の押印が有効とされた例(最判平成6年6月24日家月47巻3号60頁)などありますが、あえてグレーな方式で作成するのは避け、原則を守りましょう。
④ 加除訂正は方式を守ること
自筆証書遺言の内容に加除訂正を加える場合には、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名押印し、かつ変更の場所にも押印する必要があります(民法968条3項)。役所でよくやるように、間違えた個所を二重線で消し、正しい文字を加えて訂正印を押しただけでは方式違背となってしまうので注意して下さい。
民法968条
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
困ったら専門家にご相談ください
以上のとおり、遺言書には様々な種類がありますが、自筆証書遺言であれば誰でも簡単に作成することができます。
もっとも、遺言書の内容をどうするかが一番の問題です。誰にどれだけ相続させるのか、遺言書がない場合には法律に従ってどのように相続されるのか、遺留分はどのように考慮すればよいのかなど、クリアにすべき問題は沢山あります。
遺言書の作成で困ったら、ぜひお近くの弁護士にご相談ください。ゆりの木通り法律事務所では、遺言に関するご相談は初回相談料無料です。浜松市や近隣市町の方は、当事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。