面会交流とは何か?

 面会交流とは,婚姻中の父母が別居している場合,又は父母が離婚した場合に,非監護親が子と直接会い,または電話や手紙などを用いて交流することをいいます。今の時代では,電子メール,SNS,テレビ電話などを活用した交流も考えられるでしょう。
 平成24年4月1日から施行された改正民法766条には,父母が協議離婚する際には「父又は母と子との面会及びその他の交流」について「子の利益を最も優先して」協議で定めること,協議が調わないときには家庭裁判所がそれを決めること,必要がある場合には事後的にその定めを変更することができることが明記されました。
 これまで,面会交流については,民法の条文において明記されていなかったことを考えると,法律がいかに面会交流を重視するようになったかが分かるかと思います(なお,改正前民法766条は「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める」と規定し,面会交流も当然に「監護について必要な事項」に含まれると考えられていました。東京家審昭和39年12月14日家月17巻4号55頁参照)。
 

民法766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
 
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
 
 なお,児童の権利に関する条約(わが国では,1990年9月21日に条約署名,1994年4月22日に批准,同年5月22日に効力発生)の第9条3項には,面会交流について次のとおりの規定があります。
 
児童の権利に関する条約9条3項
 
締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。
 

面会交流は誰の権利でしょうか?

 面会交流は,非監護親から監護親に対して請求されるものであることから,非監護親の「権利」として考えている方が多いと思われます。
 しかしながら,裁判所は,「面接交渉の内容は監護者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり,面接交渉権といわれるものは,面接交渉を求める請求権というよりも,子の監護のために適正な措置を求める権利である」とし(最決平成12年5月1日民集54巻5号1607頁調査官解説参照),面会交流自体を「人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利」であることを前提に(大阪家審平成5年12月22日家月47巻4号45頁),それが健全に行われていない場合に非監護親が子の利益のために是正を求めることができるものと解釈しています。
 上記のとおり,民法改正により,「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」との留保が付けられたことも(民法766条1項),裁判所による上記見解を前提としているものと考えることができます。

面会交流にはどのような意義があるか?

⑴ 別居親との離別のダメージを癒す

 父母の別居や離婚によって,子どもは,様々な負の感情を経験してダメージを受けます。離れて暮らすことになった非監護親と面会交流によって定期的に接することで,別居や離婚による悪影響を軽減し,子どもの受けたダメージを癒すことができると考えられています。

⑵ 愛されている安心感,自己肯定感を得る

 定期的な面会交流の実施により,子どもは両親から愛され,大事にされていることを実感することができます。自分が両親から愛されていることを実感することで,子どもは自分が大切な存在であるという自己肯定感をもつことができると考えられています。

⑶ 自尊感情を育む

 良好な面会交流の実施により,子どもが周囲の家庭に比べて自分の家庭に引け目を感じたり,親の愛情を疑ったりすることがなくなり,自身を持って前向きに日々の生活に臨むことができるようになります。このような自尊感情は,子どもの健全な成長を促す助けになると考えられています。

⑷ 親を知ることが自我を形成する助けとなる

 子どもは,父母と接するなかで自分が何者であるのかということを知り,父母を手掛かりとして理想の男性モデルや女性モデルを形成し成長していきます。これらは,子どもの健全な自我の形成に不可欠なものであり,継続的な面会交流はその助けになると考えられています。

*片岡武他著『面会交流-子どもの気持ちに寄り添う調停実務』2018日本加除出版pp.3-4参照

面会交流に関する家庭裁判所の実務

 両親の話し合いにより面会交流の方法等について協議ができれば問題はありません。しかし,そのような協議がまとまらない場合には,家庭裁判所に対して面会交流調停の申立てをすることが考えられます。これは,監護親でも非監護親でも,どちらからでも申し立てることができます。弁護士に代理人を依頼する方もいれば,ご本人で手続をする方もいます。
 面会交流調停では,原則として家庭裁判所調査官が協議に参加し,子の利益を尊重した面会交流の方法を模索することになります。調停での協議がまとまらない場合には,裁判官が審判にて面会交流の方法を決定します。そして,最近の調停・審判の実務では,面会交流が子の健全な育成に有益なものであるとの認識に立ち,面会交流によって子の福祉を害するおそれがあるといえる特段の事情がある場合を除き,原則として面会交流を認める運用をしています。
 例えば,東京高決平成25年7月3日判タ1393号233頁が「夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状態を回復させ,健全な成長を図るために,未成年者の福祉を害する等の面会交流を制限すべき特段の事情がない限り,面会交流を実施しているのが相当である」と判示したことからも,裁判所の運用を伺うことができます。
 なお,裁判所の審判による場合,面会交流の方法等は家庭裁判所調査官による意見などを参考に,個別具体的な事情に基づき裁判官が決定します。私の経験では,部活等が多忙になる中学生までは,月1回数時間程度の面会交流が認められる例が多いという印象です。

面会交流が認められない特別の事情

 上記のとおり,現在の裁判所では,「未成年者の福祉を害する等の面会交流を制限すべき特段の事情」がなければ定期的な面会交流が認める運用となっています。
 ここでいう「特段の事情」とは,例えば,①非監護親による子の連れ去りのおそれがある場合②非監護親による子の虐待のおそれがある場合③非監護親による監護親に対する暴力等のおそれがある場合などが考えられます。これ以外でも,個別具体的な事情により,「子の利益を最も優先して考慮」した結果,面会交流を実施するべきではないと考えられるような場合には,面会交流が認められません。


 

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