1 休業損害とは
2 休業損害として認められる範囲
⑴ 給与所得者の場合
⑵ 事業所得者の場合
⑶ 会社役員の場合
⑷ 主婦の場合
⑸ 無職者・学生の場合

休業損害とは

交通事故を原因とする怪我の治療などのために収入の減少がある場合,その減少分については,交通事故と因果関係のある損害として加害者に対して請求することができます。交通事故の賠償実務では,この損害のことを「休業損害」と呼んでいます。
休業損害のポイントは,「現実に発生した収入の減少」についての損害であることです。原則として,実際に収入が減らない限り,損害として認められません。
なお,後遺障害によって将来発生する収入の減額については,「後遺障害逸失利益」という別の損害として認められる場合があります。

休業損害として認められる範囲

⑴ 給与所得者

事故前の収入を基礎として,交通事故によって休業したことにより発生した実際の収入の減少分について認められます。
保険実務では,事故前3カ月の平均賃金を基礎に算定されることが多いです(所得税や住民税を控除する額面金額を基準にします。)。ただ,事故前3カ月では変動のある給与体系の場合や賞与などが考慮されないこともあるため,その他の補足資料を提出して適切な損害を算定することもあります。
なお,実際には収入の減少がなくても,有給休暇を使用した場合には休業損害として認められます。休業を原因とする賞与の減額や昇給の遅延による損害についても認められる場合があります。

⑵ 事業所得者

事故前の収入を基礎として,現実の収入の減少分について認められます。休業中の固定費の支出についても,事業の維持・存続のためにやむを得ないものは,休業損害として認められる場合があります。
なお,事故前の収入については,確定申告書に基づき算定します。そのため,何らかの理由により過少申告がある場合には,基礎収入の金額をいくらにするのかについて問題となります。裁判例のなかには,申告所得を超える金額を基礎収入として認められたケースも存在します。

⑶ 会社役員

会社役員の報酬のうち,労務提供の対価部分は休業損害の基礎収入とすることができます。一方で,利益配当の実質をもつ部分は休業損害の基礎とすることはできません。
つまり,役員としての肩書きがあっても,従業員と同様に働き手として稼働しており,かつ交通事故によって実際の収入減があった場合には,その減少分が休業損害として認められることになります。

⑷ 主婦

賃金センサス(産業計,企業規模計,学歴計,女性労働者の全年齢平均の賃金額)を基礎として,受傷のため家事労働に従事できなかった期間について認められます(最判昭和50年7月8日交民8巻4号905頁)。例えば,平成28年度の賃金センサスでは,上記金額が376万2300円とされていますので,同金額の1日あたりの金額(376万2300円÷365日=10308円)に,家事労働に従事できなかった日数をかけ,休業損害を計算します。
なお,パートなどをしている兼業主婦の場合,現実の収入額と賃金センサスによって算定された金額のいずれか高い方を基礎収入として計算します。

⑸ 無職者(学生を含む)

無職者の場合,実際の収入の減少がないため,原則として休業損害は認められません。
もっとも,労働能力や労働意欲があるものの,交通事故の当時一時的に無職である場合などについては,例外的に,平均賃金の8割程度を基礎収入として休業損害が認められる場合があります。また,学生については,交通事故によって就労が遅れた場合に,休業損害が認められる場合があります。

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