個人の破産手続についてQ&A形式で詳しく説明致します。なお,破産手続の実際の進め方などは,申立てをする裁判所によって若干異なります。ここでは,静岡地方裁判所管内(浜松支部も含まれます)運用に基づいて説明します。

 

Q 自己破産のメリットとデメリットを教えて下さい?

A 破産手続きのメリットは,原則,すべての借金の支払義務が免除され,経済的な再生が容易になるという点です。一方,破産手続きのデメリットは,自己所有の不動産等の財産がある場合にはそれらを現金化して借金の返済に充てなければいけない点,信用情報の登録により一定期間借入(携帯電話の割賦販売などを含む)ができなくなる点,手続中は警備員や取締役などの一定の仕事が制限される点です。なお,破産手続は官報に公告されますが,それ以外の場面で破産したという情報が公にされることはありません。例えば,住民票に載ることもなければ,就職活動で不利益に扱われることもありません。

 

Q 破産の申立てをするとすべての財産を取られてしまうのですか?

A いいえ。破産手続きは債務者の経済的な再生のために存在するものですから,そのために必要な一定の財産(これを「自由財産」といいます。)の確保が認められています。たとえば,金銭や預貯金は99万円まで残すことができます。家電や生活用品は,基本的に財産価値がありませんので,手元に残すことができます。自動車も,価値がなければ同様に手元に残すことができます。なお,相当額を破産財団に支払ったり,自由財産の拡張という手続によって,任意の財産を手元に残すことができる場合もあります。

 

Q 破産手続の一般的な流れについて教えて下さい。

A 破産手続は,一般的に次のような流れで進みます。
① 委任契約
② 受任通知の発送
③ 破産申立書の作成
④ 破産手続開始決定(財産がない場合は同時に廃止決定)
⑤ 免責審尋期日
⑥ 免責許可決定
まず,ご依頼後に弁護士との間で委任契約を締結し,同契約に基づき各債権者に「受任通知」を発送します。次に,債権者や依頼者様から提供を受けた資料に基づき,弁護士が「自己破産申立書」を作成し,裁判所に提出します。
裁判所が申立書の内容を確認し,形式に不備がなければ「破産手続開始決定」が出されます。その後,一定の財産がある場合には,裁判所が指名した「破産管財人」が債務者の財産を調査し,お金に換え,債権者に配当します。一定の財産がない場合には,破産手続きは開始すると同時に終了し,財産の調査などをせずに,免責に関する手続きのみを行うことになります(これを「同時廃止」といいます。)。
免責に関する手続きでは,債務者が裁判所に出頭して裁判官から質問などを受ける機会があります(これを「免責審尋期日」といいます。)。この期日において問題がない場合には,裁判所から「免責許可決定」が出され,破産手続きが終了します。

 

Q 破産手続きにはどの程度の期間がかかりますか?

A 一般的には,依頼を受けてから1~2か月程度で裁判所に申立てをすることができます。なお,破産の申立てには依頼者様に用意していただく資料が複数あるため,これらのご用意がどれだけ早くできるかによってその期間は変動します。
また,裁判所に申立てた後は,同時廃止事案では一般的には1~3か月程度で集団審尋を経て手続が終了します。破産管財人が就く事案では,個別の事情に応じて期間が変動します。免責調査のみの場合は同時廃止とそれほど変わりはありませんが,不動産などの財産を換価・配当する場合には,相当程度の期間が必要になります。

 

Q 管財事件と同時廃止事件とはどのように分けられるのですか?

破産手続開始決定と同時に裁判所が破産管財人を選任し,同管財人が手続を主導的に進める案件を「管財事件」といいます。他方で,債務者に換価するような財産が無く破産管財人が選任されない案件を「同時廃止事件」といいます。
静岡地方裁判所管内の場合,①財産の一項目の合計(例えば,預貯金なら預貯金,保険解約返戻金なら返戻金ごとの合計額)が20万円以上の場合,②資産が不明確で資産調査が必要な場合,③免責不許可事由が一つでもある場合,④弁護士が申立代理人として申立前調査業務を行っていない場合には,原則として管財事件として処理されることになります。
管財事件の場合には,開始決定前に裁判所に予納金を納付する必要があります(同予納金がそのまま管財人の報酬に充てられます)。

 

Q 管財事件の予納金の金額はいくらですか?

上記のとおり,管財事件の場合には裁判所に予納金を納付する必要があります。静岡地方裁判所管内では,一応の目安として,通常管財事件の予納金は50万円~,小規模管財事件の予納金は20万円~とされています(予納金は事案の難易度によって裁判所が決定するため,あくまで目安です)。
そして,次のような事情がある場合には,原則として少額管財事件として処理されるものとされています。すなわち,異時廃止が確実又は財産形成見込額が1000万円以下であること,開始決定時から3か月程度で換価業務の終了が見込めること,債権者の人数が50人以下であること,労働債権者がいないこと,債務者申立であること,申立人を当事者とする訴訟事件が係属していないこと,賃貸物件の明け渡しが完了していること,リース物件処理の完了が明確であること,及び未処理の産業廃棄物が存在しないことです。
少額管財事件以外は通常管財事件となるため,裁判所への予納金を抑えるためにも申立代理人の業務は重要になります。

 

Q 免責不許可事由とは何ですか?

A 法律で定められたある一定の事情がある場合には,破産手続によって債務の免責が認められません。このある一定の事情のことを「免責不許可事由」といいます。
どのような事情が免責不許可事由に当たるかについては,破産法252条1項に定められています。長くなるので全て引用することはできませんが,よくあるのが同条項4号の「 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担したこと。」に該当する場合でしょうか。浪費は収入に見合わない贅沢な買い物,「賭博」とはパチンコや競馬などのギャンブル,「射幸行為」とは投資信託や仮想通貨などの投資全般を指します。

>>免責不許可事由について詳しく知りたい

 

Q 破産手続中に債権者からの督促はありませんか?

A 弁護士から債権者に対して受任通知を送付すると,債務者本人に対する督促や連絡はすぐに止まります。その後は,弁護士が債務者に代わって債権者と連絡を取りますのでご安心ください。

 

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