1 はじめに
2 相続の基本
3 相続の承認と放棄
4 遺産分割
5 遺言

1 はじめに

相続をめぐる争いは,高齢化社会による死亡者数の増加と相続人の権利意識の高まりから,年々増加の一途をたどっています。また,当事者が親族であるという特殊性や,過去の人間関係の積み重ねを原因とする紛争内容の複雑性から,いったん争いが生じてしまった場合には複雑化・長期化するという特徴があります。
まずは,自ら相続をめぐる争いを起こさないために,生前に何ができるのかを考えておくことが重要です。また,相続をめぐる争いが起こりそうな場合には,紛争の複雑化・長期化を避けるために,早い段階での専門家による客観的な立場からのアドバイスを得るべきでしょう。

2 相続の基本

相続は死亡によって開始します(民法882条)。相続人は,被相続人(亡くなった方)の子,直系尊属(父母や祖父母など,自分より前の世代で直通する系統の親族),兄弟姉妹,及び配偶者です。相続人には,それぞれ序列があり,まず被相続人の配偶者は常に相続人になります。被相続人に子がいるときには,子と配偶者は同順位の序列です(民法890条)。被相続人に子がいないとき(被相続人の子の子ども,つまり孫がいる場合には,その孫が代襲相続人となります。)には,直系尊属が相続人となり,直系尊属もいないときには兄弟姉妹が相続人となります。
被相続人の子が,被相続人の配偶者とともに相続するときには,それぞれの相続分は2分の1です(民法887条1項)。子が数人あるときは,各相続人の相続分はそれぞれ同じになります。被相続人に子がなく,直系尊属と配偶者とが相続する場合には,直系尊属の相続分が3分の1で,配偶者の相続分が3分の2とされます(民法900条2号)。被相続人に子も直系尊属もなく,兄弟姉妹と配偶者とが相続する場合には,兄弟姉妹の相続分が4分の1で,配偶者の相続分が4分の3になります(同条3号)。
相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。相続人が複数いる場合には,相続財産は共有に属します。相続により共有となった財産が最終的に誰に属するのかを決めるのが,遺産分割手続です。遺産分割は,相続人間の協議ですることができますが,協議が整わないときには,家庭裁判所の調停や審判といった手続によって行われます。

3 相続の承認と放棄

(1)熟慮期間

相続人は,自分が相続人となったことを知った時から3か月以内に(この期間を「熟慮期間」と呼びます。),その相続を単純承認するか,限定的に承認するか,又は放棄するを選択しなければなりません(民法915条1項本文)。なお,この熟慮期間は,家庭裁判所への請求によって,伸長することができます(民法915条1項但書)。

(2)単純承認
相続人が単純相続を選択した場合,同人は無限に被相続人の権利義務を承継します。相続人が自らかかる選択をしなくても,熟慮期間内にその他の意思表示をしない場合,相続財産の処分をした場合,相続財産を隠匿した場合など,法律上定められた一定の行為をすることで,単純承認したものとみなされます。そのため,相続放棄を検討している方は,これらに該当する行為をしないよう注意が必要です。

(3)限定承認

相続人が限定承認を選択した場合,同人は相続によって得た財産の限度においてのみ,被相続人の債務を弁済し,それを超える責任から免れます。もっとも,自らにとっては何の利益にもならないことから,ごく限られた場合以外に選択されることはありません。

(4)放棄

相続人が相続の放棄を選択した場合,相続による権利義務の承継はありません。相続を放棄した者は,初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。なお,相続の放棄をする場合,相続人が家庭裁判所にその旨を申述する必要があります。

4 遺産分割

上記のとおり,相続財産は,被相続人の死亡により,当然に共同相続人による共有(または分割債権債務)という法律関係が生じます。これらの相続財産を最終的に誰のものにするのかを決める手続きのことを「遺産分割」といいます。
遺産分割は,相続人全員の協議ですることができます。もっとも,協議が整わなかった場合には,家庭裁判所の調停又は審判で決めることになります。なお,被相続人は,遺言によって遺産の分割の方法を定めること,または相続開始から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁じることができます(民法908条)。
遺産分割の方法としては,現物で分けるという「現物分割」が原則となります(最判昭和30年5月31日民集9巻6号793頁)。そのほか,遺産を売って金銭で分けるという「換価分割」,共同相続人の一人が遺産を取得して他の共同相続人に債務を負担し,これを後で支払うという「債務負担方式」による分割も認められています。不動産など,実際に現物で分けると問題が生じる場合には,換価分割や債務負担方式が一般的になっています。

5 遺言

生前に自分の財産を自由に処分できるように,自分の死後の財産についても自由に決めることができます。ただし,相続人を保護するために,遺留分に関する規定には違反することができません。このように,単独で死亡の時に効力を生じさせる意思表示を「遺言」といいます。遺言では,第三者への財産の贈与,遺産分割の方法の指定,相続分の指定などをすることができます。このため,遺言は,自分の死後,子どもたちなどの相続人が遺産分割などで争うことを防ぐ効果を持たせることも可能です。
なお,遺言については,その方式が厳格に定められており,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言などの種類があります。せっかく遺言書を作成しても,それが適切な方法で作成されていなければ無効となります。そのため,遺言書作成の際には,公正証書遺言にするか,又は専門家へのご相談をおすすめいたします。



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