1 はじめに
2 刑事手続の流れ
3 もし逮捕されてしまったら
4 弁護士にできること
5 弁護士に依頼するメリット

1 はじめに

日常生活を送るなかで,刑事手続に触れる機会はほとんどありません。そのため,もし自分や親族が逮捕されてしまった場合には,何をすべきか分からないというのが普通です。以下で解説するように,刑事手続は時間との勝負になることが少なくありません。そんなときは,すぐに弁護士に相談し,今後の対応を相談するようにしましょう。弁護士は,逮捕された方の利益を守るために,

 

2 刑事手続の流れ

(1) 犯罪の発生

犯罪の発生後,110番通報などで警察が犯罪を認知すると,捜査が開始されます。捜査の結果,警察が犯人と疑う人のことを,「被疑者」と呼びます(マスコミなどでは,「容疑者」と呼ばれますが,正しくは「被疑者」です。)。

(2) 逮捕

捜査の上で,被疑者に逃亡のおそれや証拠隠滅の恐れがある場合には,警察が裁判官の許可を得て被疑者を「逮捕」します(警察が犯罪を目撃していた場合などに,警察が裁判官の許可を得ないまま「現行犯逮捕」をすることもあります。)。逮捕は,捜査の必要上被疑者の身柄を拘束するための手続きであり,その拘束期間は原則72時間(警察で48時間,検察で24時間)しか認められていません。
警察官は,48時間のうちに必要な捜査を行い,検察官に事件を送致します(マスコミなどでは「送検」と呼んだりします。)。検察官は24時間以内に被疑者を「勾留」するか,釈放するかを判断しなければなりません。なお,事件の性質や被疑者の生活状況などから,逮捕することなく,任意の事情聴取のみで捜査が進行することもあります。

(3) 検察官送致・勾留(被疑者段階)

検察官は,犯罪を行った疑いのある被疑者を起訴するか否かを決定する機関です。検察官は,送検された事件について,逮捕されている被疑者に逃亡の恐れや証拠隠滅のおそれがあると判断した場合,裁判所に「勾留」の請求を行います。「勾留」とは,「逮捕」と同じように,被疑者を身体拘束する手続きですが,その拘束期間は通常最大20日です(特別な理由がある場合には,さらに延長されることもあります。)。検察官は,勾留期間中に被疑者を取り調べ,起訴するかどうかを判断します。もちろん,その必要性がない場合には,勾留されることなく釈放され,いわゆる「在宅」のまま取り調べを行うこともあります。

(4) 起訴(公訴の提起)

検察官が,裁判所に対し,「起訴状」を提出して刑事裁判を求めることを「起訴」,より正確には「公訴の提起」といいます。起訴された被疑者は,「被告人」と呼ばれます。事件の性質や情状などから,検察官が起訴をせず,刑事手続が終わる場合も少なくありません。このような場合を,「不起訴処分」といいます。また,軽微な事件などでは,検察官が略式命令を請求することで,正式裁判を受けることなく罰金の略式命令が出ることがあります(検察官の請求に対して,被疑者が望めば,正式裁判を受けることもできます。)。

(5) 刑事裁判

刑事裁判では,検察官請求証拠の取調べ,証人尋問,被告人質問などが行われ,裁判官が,本当に被告人が罪を犯したのか,また仮に罪を犯したとすればどのような刑罰が相当かを判断します。重大な犯罪の場合には,裁判員裁判となり,裁判官に加えて民間から選ばれた「裁判員」が話し合いによって同様の判断を行います。通常の刑事裁判に比べ,裁判員裁判は手続きが複雑となり,裁判手続も長期化する傾向があります。

 

3 もし逮捕されてしまったら

(1)あなたが逮捕されてしまったら

あなたに顧問の弁護士や事前に相談をしていた弁護士がいる場合には,迷わずその弁護士を呼びましょう。弁護士は,今後の刑事手続について,あなたがどのような行動をとるべきかを詳しくアドバイスしてくれるはずです。
また,仮に適当な弁護士を知らなくても,全国の弁護士会では「当番弁護士制度」を実施しています。当番弁護士とは,身体拘束を受けた被疑者に対し,当番制で待機している弁護士が無料(2回目以降は有料)で面会に来てアドバイスをくれるという制度です。もしあなたが逮捕されてしまったら,すぐに当番弁護士を依頼してください。警察官に対して「当番弁護士を呼んでほしい」と頼むだけで大丈夫です。

(2)親族が逮捕されてしまったら

それでは,あなたの親族が逮捕されてしまった場合にはどうすればいいのでしょうか?親族であっても,逮捕手続中(勾留されるまでの最大72時間は)本人と面会することはできません。そのため,本人の様子はもちろん,どのような理由で逮捕されてしまったかすらよく分からないかもしれません。
本人の様子が心配な場合は,近くの弁護士に相談するか,弁護士会に当番弁護士を依頼しましょう。弁護士がすぐに本人と接見し(弁護士であれば,逮捕中の本人との接見は可能です。),本人の様子や今後の手続きの流れについて説明してくれるはずです。
刑事手続は,時間との勝負となることが少なくありません。それは,逮捕や勾留の期限が法律上明確に決まっているため,それらの手続への対抗措置を取る時間的余裕がない場合が多いからです。なるべく早く弁護士に相談することで,身体拘束からの早期の開放のために,最善の方法を選択することが可能になります。

 

4 弁護士による弁護活動

(1) 逮捕されないために

犯罪を犯した人がすべて逮捕されるわけではありません。逮捕のためには,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が必要です(刑事訴訟法199条)。逮捕の理由とは,「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由が存在していること」です。また,逮捕の必要性とは,「逃亡又は罪証隠滅のおそれがあること」をいいます。この逮捕の理由と逮捕の必要性がない場合,警察官や検察官は,逮捕状の請求自体を躊躇するでしょう。また,勾留の請求を受けた裁判官は,勾留を棄却しなければなりません。
弁護士は,逮捕の可能性のある方の依頼を受けた場合,様々な証拠を集めることによって逮捕の理由又は逮捕の必要性がないことを立証し,警察官や検察官に逮捕状の請求をさせないように弁護活動を行います。

(2) 勾留されないために

勾留についても,逮捕と同様に,「勾留の理由」と「勾留の必要性」が必要です。「勾留の理由」とは,被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることに加え,刑事訴訟法60条1項各号記載のいずれかの事実(①被疑者が住居不定のとき,②被疑者に罪証隠滅のおそれがあるとき,③被疑者に逃亡のおそれがあるとき)があることをいいます。また,勾留の必要性とは,基礎の可能性,捜査の進展の程度,被疑者の個人的事情などから判断する勾留の必要性のことをいいます。
弁護士は,逮捕されて勾留の可能性のある方の依頼を受けた場合,様々な証拠を集めて勾留の理由又は勾留の必要性がないことを立証し,検察官に拘留請求をさせないように,また裁判官に勾留請求を却下するように弁護活動を行います。

(3) 勾留への不服申立て

勾留の決定は,検察官の請求に基づき,裁判官が勾留の理由と勾留の必要性があるか否かを検討して行います。仮に,勾留の決定が出されたとしても,これに対する不服申し立ての制度があります(勾留決定に対する「準抗告」と呼ばれます。刑事訴訟法429条1項2号)。準抗告審は,3名の裁判官で改めて勾留の理由や必要性について検討します。そして,それらがないことが認められれば,勾留決定は取り消されるため,被疑者は直ちに釈放されます。
弁護士は,勾留された被疑者の依頼を受けた場合,勾留決定に対して不服申立てをするための証拠を集め,裁判所に勾留決定を取り消させるための弁護活動を行います。

(4) 保釈の請求

勾留されたまま起訴された被告人は,警察署や拘置所において引き続き身柄を拘束されます。これを「起訴後の勾留」といいます。起訴前の勾留と異なり,起訴後の勾留では,裁判所に対して保釈の請求ができます。保釈とは,保証金の納付等を条件にして,勾留の効力を残しながら一時的にその執行を停止し,被告人の身体拘束を解く手続です。
弁護士は,勾留されたまま起訴された被告人の依頼を受けた場合,様々な証拠を集めて保釈の請求を行い,裁判所に保釈の許可を求める弁護活動を行います。

(5) 公判での立証活動

公判では,検察官と弁護人がそれぞれ証拠の請求を行い,裁判官が被告人に公訴事実が認められるか(被告人が犯罪を行ったか否か),仮に認められる場合にはどのような刑罰が相当であるかを判断します。
弁護人は,被告人が公訴事実を否定している場合には,様々な証拠を集めて検察官の立証を弾劾します。また,公訴事実に争いがない場合であっても,被告人にとって有利な証拠を集め(例えば,被害者との間で示談を成立させ,示談書を作成するなど。),少しでも刑罰が軽くなるよう弁護活動を行います。

 

5 弁護士に依頼するメリット

・すぐに被疑者と接見し,被疑者の様子や事件の詳しい事情を把握することができます。

・身体拘束からの早期解放のために,事案に応じた最善の手続をとることができます。

・被疑者にとって有利な証拠を集め,刑事処分を軽減するための活動を行います。