1 財産分与とは

 財産分与とは(民法768条),離婚に際して,夫婦が婚姻生活中に協力して形成した財産を分ける(どの財産をどちらの当事者が取得するのかを決める)手続きです。財産分与には,清算的要素,慰謝料的要素,扶養的要素があるといわれますが,中心となるのは夫婦の共有財産を分けるという清算的要素になります。慰謝料的要素や扶養的要素は特別な理由がある特に例外的な場合以外には認められていません。
 婚姻期間中に形成した財産,例えば,預金,不動産,自動車などは,夫婦のどちらか一方の名義になっていることが多いですが,どちらの名義であっても夫婦が協力して形成したものであれば原則として共有物と考え,離婚時に等しい割合で分けることになります(場合によっては分与割合2分の1から修正をすることもありますが,極めて特殊なケースです。)。そのため,財産分与は,夫婦間の公平・平等を図るための手続であると考えられています(最大判昭和36年9月6日民集15巻8号2047頁)。
 もっとも,どの財産をどのように分けるのが夫婦間の公平・平等にかなうのかが問題となります。このページでは,財産分与にまつわる様々な問題について解説します。

 

民法768条(財産分与)

1 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

 

2 財産分与の対象

 財産分与の対象となるのは,「当事者双方がその協力によって得た財産」です(民法768条3項)。婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産であれば,その種類や名義は関係ありません。典型的な例としては,現金,預貯金,不動産,自動車,積立式の保険,退職金,株式などが挙げられます。
 なお,宝くじや馬券が当たったときの当選金についても,財産分与の対象となるとした裁判例があります(東京高決平成29年3月2日,奈良家審平成13年7月24日家月54巻3号85頁)。もっとも,このような特殊な財産の場合は,その形成に至った経緯が問題となるため,必ずしも一般化できないと思われます。
 財産分与の対象となるか否かで問題となりやすいのは,子ども名義の預金です。一般的には,子ども自身がもらったお年玉やお小遣い(教育費として祖父母からもらったお金も含む)を貯蓄したものであれば,それは子ども自身の財産となりますので,財産分与の対象にはならないと考えられています。

 

3 特有財産

 夫婦の他方が婚姻前から有する財産は,「特有財産」として財産分与の対象になりません。また,夫婦の協力によらずに得た財産,例えば相続で得た財産や交通事故の損害賠償金なども,「特有財産」になります。
 では,婚姻前から有していた預金口座を婚姻後も継続して使用し,預金が混合してしまった場合はどのように考えればよいのでしょうか?これについては,なかなか一般化できませんが,独身時代の預金額と婚姻後の預金額が明確に区別できるのであれば,独身時代の預金額についてのみ「特有財産」と主張することもできると考えます。

 

4 財産分与の基準時

 財産は時の経過とともに変化することから,財産分与の対象となる財産の範囲を確定する基準時を定める必要があります。この点,上記のとおり,財産分与が夫婦で協力して形成した財産を分ける手続きであることからすれば,この基準時は別居をして夫婦関係が実質的に破綻した時点(離婚前に別居の事実がない場合には離婚した時点)とするのが一般的です。別居直前に夫婦の一方当事者が多額の預金を払い戻したなどの事情がある場合には,公平の見地から調整がなされることもあります。
 なお,財産を分ける際に,その価値を評価する必要がある財産があります。この点,その財産自体の価値が時の経過とともに変化しない財産については,財産分与の対象となる財産の範囲を確定する基準時と同じ時点でその評価額を決めます。他方で,不動産や有価証券など,夫婦の協力等とは無関係に価値が変動するものについては,離婚時を基準にその評価額を決めます。そのため,離婚前に別居の事実がある場合(特に別居時から離婚成立時までの期間が長期に及ぶ場合)には,財産分与の範囲を決める基準時と,個別の財産の評価額を決める基準時と,ふたつの基準時が存在することになります。ちょっと複雑ですね…。頭が混乱するような場合には,専門家にご相談ください。

 

5 将来の退職金

 将来支給される退職金は,離婚または別居時点では現実に存在しない財産です。また,社会情勢の変化や様々な事情によって,将来本当に支給されるか分からないという不安もあります。このような性質をもつ将来の退職金が財産分与の対象財産になるのか否かが問題となります。
 この点,以前は,離婚または別居時点で現実に存在しない財産は,財産分与の対象とはされていませんでした。しかし,退職金が賃金の後払い的性質を有することから,定年退職が比較的近い将来予定されている場合には,退職金を財産分与の対象財産とする事例が徐々に増えていきました。そして,現在は,離婚または別居時点で自己都合退職した場合の支給額を財産分与の対象財産とする取り扱いが一般的です。
 なお,婚姻前および別居後は,夫婦間の協力関係はありませんので,その期間に相当する退職金は財産分与の対象とはなりません。具体的には,「基準時において自己都合退職した場合の支給金額×(同居期間/基準時までの在職期間)」が財産分与の対象財産になるということになります(財産分与額は,これに財産分与割合,一般的には2分の1,を乗じた金額です)。
 将来の退職金に応じた財産分与額については非常に高額になる場合がありますが,その支払い方法は原則として離婚時に一括払いとされています。もっとも,現実的に支払いができない場合には,分割払いや退職金支給時払いなども考えられます。

 

6 婚姻期間中の債務

 財産分与にあたっては,婚姻期間中に形成した負の財産である住宅ローンや生活費のための借入金などの債務が問題となる場合があります。この点,財産分与の対象となる財産と婚姻期間中の債務を比べ,前者の方が多い場合にはその差額が財産分与の対象となります。他方で,後者の方が多い場合,すなわち債務過多の場合は,債務のみの分与をすることはできません。当事者間で負担割合を決めることはできますが,裁判所による調停や裁判では法的に債務の負担割合を命じることはできないとされています。
 住宅ローンの場合には,自宅を売ってその売却益でローンを返済し,残額の2分の1を他方当事者に財産分与として渡すという方法があります。もっとも,現在の経済状況では,多くの住宅はオーバーローン状態です。オーバーローン状態の場合,売却を選択すれば残ったローンはそのローンの名義人が支払いを続け,そのローン負担額を財産分与で調整することになります。

 

7 財産分与時の税金

 財産分与は実質的共有財産の精算の制度です。そのため,財産分与を受ける側には,原則として贈与税も所得税もかかりません。例外的に税金が発生するのは,①分与された財産の額が財産の総額からみて著しく過大な場合や,②税金逃れのために財産分与を利用した場合です(詳細は,国税庁のウェブサイトをご確認下さい。)。
 なお,財産分与によって不動産を取得した場合(夫名義の不動産を妻名義にするなど)には,不動産取得税がかかります。また,不動産の価格が取得時より値上がりしている場合には(現在の社会情勢ではそのようなことは殆どあり得ませんが…),財産分与をする側にも譲渡所得税がかかります。

 

 

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